FMEA-故障モード影響度解析
FMEA-故障モード影響度解析
故障モード影響度解析-工程FMEA、設計FMEA
FMEA(Failure mode and effects analysis)は「故障モード影響度解析」とよばれ―
①設計段階で、事故・故障を設計段階で予測・摘出する「設計FMEA」、②製造工程中での各故障モードの管理信頼性を評価する「工程FMEA」がある。
以下: FMEAの分類、実際の例、よくある評点の注意 の順に記載している。
FMEAの分類
Wikipediaによれば:
設計FMEA(設計故障モード影響解析:Design FMEA)は、製品を成す部品、ユニット毎に単純化された故障モードを挙げ、これら故障モードが製品に及ぼす影響を予想することにより、潜在的な事故・故障を設計段階で予測・摘出する。さらにこれら故障モードに対して故障が発生する確率、発生した場合の影響の大きさ及び、発生の見つけにくさなどを評価・採点,ランク付けを行い重大な事故・故障を予防する。
工程FMEA(工程故障モード影響解析:Process FMEA)は工程管理部門が製造工程における故障発生の原因,メカニズムを追求し工程の改善を行うために使われる。
評点方法
RPN(=Risk Priority Number=リスク優先度)により、程度の大きさを評価する。この評点は以下の式より算出される。
(RPN)=(深刻度)×(発生度)×(検知度)
通常、評点は10点法で計算される。
深刻度=10段階評価で、例えば、10であれば、顧客が怪我をするなど欠陥モードの影響の深刻度を基準を定めて記載する。数値が大きいほど、深刻度が高い。
発生度=その欠陥が起こる確率で1/2以上であれば"10"、1/400(工程能力で1.00)程度であれば"5"、1~2ppm以下であれば"1"などやはり10段階で評価する。数値が大きいほど発生度は高い。
検知度=欠陥を検査した時にどの程度検知されるかを10段階で示したもので、"10"なら80%程度しか検出できない、"5"なら90%程度、"1"なら99.5%検知できる、と数字が低いほど検査能力を高く評価する。数値が低いほど検知度が高い。
そしてこれらの数字を掛け合わせたものが(RPN)の数値となり、1~1000までの結果となる。実務上は、(顧客や規格からの規定がない限り)例えば、”発生度”などは業態により異なる。仮に、”発生度の評点1”を考えると、サービス業では1/10,000程度かもしれないし、製造業では、1/1,500,000(Cpk≒1.67程度)がそれに相当するかもしれないので、検知度、深刻度などの規定は必要である。
ただ、実務では、10段階評価は困難であり、サイト運営者は、シックスシグマのプロジェクトの際、「「3」「6」「9」の3段階で評価しましょう」とし、まず大まかに評価、プロジェクトが進むにあたり、10段階へ精査していった。
こういった実務上の運営のしやすさを繁栄した評点(=4点法(10段階は10点法))の実施を勧めているのが「客観説TQM(FMEA と FTA)」であり、業務で品質管理に関係のある方は一度は訪れたほうがいい、非常に良質なサイトである。
実際の例
工程FMEAの例を社会人MBA-技術者編: シックスシグマ⑭-1(工程FMEA)に示している。液体混合工程のもので、詳細は以下になる。
上の表は、こちらのブログ記事中程にも同じものがありますが、上図をクリックしても拡大されます。
このフォーム(例えば、潜在的欠陥(=故障)モード)など、コラムにある用語から類推できるのはプロセスの「機能」を重視している点である。
従って、機能を満たさない結果、すなわち、”故障”まで、潜在的欠陥モードの欄に書き入れてしまうため、「故障」と「故障モード」を混乱させてしまうデメリットもある。
例えば、例にはないが、プロセス機能欄に「A部材の取り付け、回転開始」とあるとする。潜在的欠陥モードでは、「回転しない」と入力しなさい、と教えられるが、回転しないのは「故障」であり、モードではない。故障モードは、管理下にある機器は回転数が決まっているはずであるから、「○○±○○r/minでない」であり、それには、センサーが作動しなかったりとの原因があるのである。さらには、客観説TQMでもその誤りを指摘されているが、「潜在的」なことを挙げ始めると、従業員の通勤途中の事故まで挙げなければならなくなる。
このような品質管理に携わるのは、その分野に精通した従業員であり、素人ではないので、あまりに熟知している事柄やその分野に携わる上での常識は省略すればよい。
わからない(誰でもわかるように)と指摘する管理者は学習不足なのである(実際、誰でもわかる必要は全くない。その従業員達のノウハウを継承していけば、必ず、わかる人がいるのだから。顔も知らない人がある日突然工程に入って作業をしだすことはない・・・)。
従って、「故障」と「故障モード」を理解して、使用することが大切なのである。客観説TQMでは、久米(1999)を引用しながら、以下のように説明している。
『ここに作動ピンがあって、 それが曲がって動かなくなったとすると、 「作動ピンの曲がり」 という事象と 「動かない」 という事象が把握される。そこで、 前者を 故障モード 、 後者を 故障 という (同旨:久米均、「設計開発の品質マネジメント」、日科技連 P.141 は故障モードの意味を正しく解説している)。つまり、 停止、 チョコ停、 油漏れ、 騒音・振動・・・・というような機能障害が故障であり、 ひび割れ、 欠け、 腐食、 磨耗、 曲がり、 折れ、 断線、 ピンホール~などの物理・化学的な変化(システムの破壊)を 故障モード と呼ぶ。 』
よくある評点の注意
「発生度」や「検知度」は各企業で評点のランキングを定めれば、運用にする際に間違いは起き難いが、「深刻度」には、よく間違えやすい落とし穴がある。
例えば、次のような例を考える。プロセスは:
「通勤に関するプロセス」である。
問題は遅刻を減らすことで、深刻度、発生度、検知度を評点すると次のようであった。
RPN=(深刻度)×(発生度)×(検知度)=5×3×1=15
そこで、あなたは、発生度を低下させるために、停滞が原因で遅刻していた車通勤から、電車通勤へ切り替えるカイゼンを行なった。すると、発生度は”2”に低下し、新たにRPNを算出すると・・・
RPN=(深刻度)×(発生度)×(検知度)=5×2×1=10
である。よくある間違いは:
RPN=(深刻度)×(発生度)×(検知度)=4×2×1=8
と、深刻度も低減していることである。ここでは、深刻度は低減しない。遅刻した時は、車通勤であれ、電車通勤であれ、深刻度の評点で規定した影響の内容が同じであるからである。
このような、ある要素の積や和を用いた管理方法は多く見られる。例えば、労働安全衛生マネジメントシステムでは、ある作業の(重大さ:危険の重大さ)+(頻度:危険源に近づく頻度)+(可能性:怪我に至る可能性)=リスクとしているが、(重大さ)の考え方も深刻度と同じである。
このような作業を考える。「定常作業で荷物の運搬(下から上の運搬)に梯子を用いて人が行なっている。」(現在の製造業では一番に指摘されそうで、考えにくいですが例としてお考えください)この作業が災害に至るのは、上の作業者の落下と、下の作業者の荷物の落下による怪我である。上の作業者の場合を考えると、(重大さ)は重傷の可能性があるので、”6”と配点した(とする)。作業の安全のため、すべり止めの安全靴、手すりを設ける処置を行なった。この処置により、怪我に至る可能性が低減できたので、評点は、(可能性)の評点が低くなるのみである。事故が起こったときの、怪我の重大さが変わるわけではない。梯子から転落すれば、重傷なのである。
製造業でも、FMEAを理解していない者も含めた、安全衛生管理の研修で、いとも簡単に(重大さ)の評点を低減して発表するグループは多い。命に係わる、係わらないに限らず、怪我や事故は従業員やその家族に多大な精神的ショックを与える。経営者は、大切な社会資本を損なうことになるのであるから、今一度、確認して欲しいと願っています(サイト運営者も、企業で長く安全衛生委員をしていましたが事故は心が痛みます)。
この場合、(重大さ)の評点が変更できるのは、作業を変更することでしか変わらない。例えば、専用エレベーターの設置などである。カイゼン前後では、(重大さ)の評点は異なるが、次の評点機会では梯子を使用したプロセスは無くなっているので、エレベーターを設置したプロセスを対象としていき、事故が起こる可能性を低減していくのである。
参考書籍/サイト
[1] 鈴木順二郎,牧野鉄治,石坂茂樹,『FMEA・FTA実施法―信頼性・安全性解析と評価』日科技連, 1982.
[2] Robin E. Mcdermott, Michael R. Beauregard, Raymond J. Mikulak, 今井 義男 (翻訳), 『FMEAの基礎―故障モード影響解析 』,日本規格協会,2003.
[3] サイト:客観説品質管理
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