FMEA-故障モード影響度解析

FMEA-故障モード影響度解析

故障モード影響度解析-工程FMEA、設計FMEA

 FMEA(Failure mode and effects analysis)は「故障モード影響度解析」とよばれ―

①設計段階で、事故・故障を設計段階で予測・摘出する「設計FMEA」、②製造工程中での各故障モードの管理信頼性を評価する「工程FMEA」がある。

以下: FMEAの分類実際の例よくある評点の注意 の順に記載している。

Wikipediaによれば:



 RPN(=Risk Priority Number=リスク優先度)により、程度の大きさを評価する。この評点は以下の式より算出される。

通常、評点は10点法で計算される。

 そしてこれらの数字を掛け合わせたものが(RPN)の数値となり、1~1000までの結果となる。実務上は、(顧客や規格からの規定がない限り)例えば、”発生度”などは業態により異なる。仮に、”発生度の評点1”を考えると、サービス業では1/10,000程度かもしれないし、製造業では、1/1,500,000(Cpk≒1.67程度)がそれに相当するかもしれないので、検知度、深刻度などの規定は必要である。

 

 工程FMEAの例を社会人MBA-技術者編: シックスシグマ⑭-1(工程FMEA)に示している。液体混合工程のもので、詳細は以下になる。

このフォーム(例えば、潜在的欠陥(=故障)モード)など、コラムにある用語から類推できるのはプロセスの「機能」を重視している点である。

 

従って、機能を満たさない結果、すなわち、”故障”まで、潜在的欠陥モードの欄に書き入れてしまうため、「故障」と「故障モード」を混乱させてしまうデメリットもある。

 

従って、「故障」と「故障モード」を理解して、使用することが大切なのである。客観説TQMでは、久米(1999)を引用しながら、以下のように説明している。

「発生度」や「検知度」は各企業で評点のランキングを定めれば、運用にする際に間違いは起き難いが、「深刻度」には、よく間違えやすい落とし穴がある。

例えば、次のような例を考える。プロセスは:

「通勤に関するプロセス」である。

 

問題は遅刻を減らすことで、深刻度、発生度、検知度を評点すると次のようであった。

RPN=(深刻度)×(発生度)×(検知度)=5×3×1=15

そこで、あなたは、発生度を低下させるために、停滞が原因で遅刻していた車通勤から、電車通勤へ切り替えるカイゼンを行なった。すると、発生度は”2”に低下し、新たにRPNを算出すると・・・

RPN=(深刻度)×(発生度)×(検知度)=5×2×1=10

である。よくある間違いは:

RPN=(深刻度)×(発生度)×(検知度)=4×2×1=8

と、深刻度も低減していることである。ここでは、深刻度は低減しない。遅刻した時は、車通勤であれ、電車通勤であれ、深刻度の評点で規定した影響の内容が同じであるからである。

このような、ある要素の積や和を用いた管理方法は多く見られる。例えば、労働安全衛生マネジメントシステムでは、ある作業の(重大さ:危険の重大さ)+(頻度:危険源に近づく頻度)+(可能性:怪我に至る可能性)=リスクとしているが、(重大さ)の考え方も深刻度と同じである。

 

このような作業を考える。「定常作業で荷物の運搬(下から上の運搬)に梯子を用いて人が行なっている。」(現在の製造業では一番に指摘されそうで、考えにくいですが例としてお考えください)この作業が災害に至るのは、上の作業者の落下と、下の作業者の荷物の落下による怪我である。上の作業者の場合を考えると、(重大さ)は重傷の可能性があるので、”6”と配点した(とする)。作業の安全のため、すべり止めの安全靴、手すりを設ける処置を行なった。この処置により、怪我に至る可能性が低減できたので、評点は、(可能性)の評点が低くなるのみである。事故が起こったときの、怪我の重大さが変わるわけではない。梯子から転落すれば、重傷なのである。

 

製造業でも、FMEAを理解していない者も含めた、安全衛生管理の研修で、いとも簡単に(重大さ)の評点を低減して発表するグループは多い。命に係わる、係わらないに限らず、怪我や事故は従業員やその家族に多大な精神的ショックを与える。経営者は、大切な社会資本を損なうことになるのであるから、今一度、確認して欲しいと願っています(サイト運営者も、企業で長く安全衛生委員をしていましたが事故は心が痛みます)。

 

この場合、(重大さ)の評点が変更できるのは、作業を変更することでしか変わらない。例えば、専用エレベーターの設置などである。カイゼン前後では、(重大さ)の評点は異なるが、次の評点機会では梯子を使用したプロセスは無くなっているので、エレベーターを設置したプロセスを対象としていき、事故が起こる可能性を低減していくのである。

 

[1] 鈴木順二郎,牧野鉄治,石坂茂樹,『FMEA・FTA実施法―信頼性・安全性解析と評価』日科技連, 1982.

[2] Robin E. Mcdermott, Michael R. Beauregard, Raymond J. Mikulak, 今井 義男 (翻訳), 『FMEAの基礎―故障モード影響解析 』,日本規格協会,2003.

[3] サイト:客観説品質管理

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