ポーターの戦略論-5つの力+α
産業の競争を駆動する5つの力とは?第六番目のフォースとは?
マイケル・ポーター(Wikipedia)は、企業戦略におけるイノベーションの分析に、産業界の競争を駆動する5つの要因と技術、また、企業が行なわなければならない、幾つかの基本戦略からの選択と技術との明確な関係を示した。さらに、イノベーションの「リーダー」となるか「追随者」となるかの2種類の市場戦略の選択を示している。[1]
本ページは5つの力(要因)に関する。
産業界の競争を駆動する5つの力とは以下であり、それぞれが機会と脅威を作り出している。
サプライヤー(原料・部品・設備)との関係
買い手との関係
新規参入者
代替製品
既存企業間の競争状況
このモデルは種々の書籍、サイトで下図のように示されている。(図は[2] p8 図表1.1 業界の収益性を決める5つの競争要因 を参考に作成)
(このパラグラフは2023年に追記しています)
三品は『戦略不全の論理』[4]の中で、構造の戦略論として触れ、ポーターの既存事業を防衛および強化するための方策について、その核心を「構造」という概念を平易な言葉へ翻訳したことにある、と述べている。
「経済学上の「構造」の実体は需要曲線と供給曲線と競合企業数にあることは見たとおりであるが、ポーターはこのうち需要曲線と供給曲線の形状を「川上業界の交渉力」と「川下業界の交渉力」に読み替えて、競合企業の数を「業界内部の競争圧力」と「参入の圧力」と「代替品の圧力」に広げて解釈したのである。そのうえで、2種の交渉力と3種の圧力を合わせて、収益を侵食する「5つの力」と銘打った。」([4], p182)
(追加はここまで)
つづいて、5つの力について見てみると・・・
5つの力と技術の関係についてティッドら(2004)([1],p94など)は以下のようにまとめている。
○買い手に対するサプライヤーの交渉力
買い手へのインプットに影響を与えるような基本的イノベーションは、サプライヤーの交渉力を増大させる。サプライヤーへの技術的依存度を低下させるようなイノベーションによって、買い手の交渉力が増大する。
○潜在的な新規参入者および代替製品
規模の経済の低下や代替製品の出現は、新規参入者の脅威を増大させる
技術的な標準への“ロックイン(囲い込み)”や、特許などによって、新規参入者の脅威は減少する。
○既存企業間の競争
イノベーションによって独占的地位を確立することができる。また、模倣によって独占的地位を破壊することができる。
第六番目のフォース
これら5つの力に加え、「補完的生産者」が第六番目のフォースであることも言われている。[3]
補完的生産者とは、競争相手とは対極にあり、自社の製品の価値を高めてくれる企業や人を指す。例えば、ハードウェアにはソフトウェア、インターネットにはブロードバンド、自動車には自動車ローン、はたまた、ホットドッグとマスタード、などである。こういった概念は「コーペティション(Co-opetition)」と呼ばれ、「競争(Competition)」と「協調(Cooperation)」を同時に謳うコンセプトである。
この概念の参考には[3]の第一章、もしくは、B・J・ネイルパフ, A・M・ブランデンバーガー, 嶋津祐一, 東田啓作 訳『コーペティション経営―ゲーム論がビジネスを変える』日本経済新聞社, 1997.に詳しい。
*ポーターの提示は、合理主義的な主張の典型であるが、示されたいくつかのフレームは極めて有効なもので、ポーターの理論に対する反論・弱点の議論は活発である。
<関連記事>
<参考文献>
[1] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント』, NTT出版,2004,pp92-95.
[2] M・E・ポーター, 土岐坤, 服部照夫, 中辻万治 訳『競争優位の戦略―いかに高業績を持続させるか』,ダイヤモンド社,1985.
[3] B・J・ネイルパフ, A・M・ブランデンバーガー, 嶋津 祐一 訳 『ゲーム理論で勝つ経営 競争と協調のコーペティション戦略 日経ビジネス人文庫 (日経ビジネス人文庫)』日経ビジネス文庫,2003.p6序文より。
[4] 三品和広, 『戦略不全の論理』, 「第6章 大局的判断の戦略論」3 事業戦略論の系譜 より抜粋、東洋経済新報社, 2005, pp181-182.
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