SWOT分析
SWOT分析
SWOT分析、イノベーションのための合理的/漸進的アプローチ
合理主義的アプローチ
技術の利用と企業の戦略立案にとって、重要な合理主義者の戦略は、「評価・決定・行動」のリニアモデルである。企業戦略では、SWOT分析がこれに相当する。このアプローチは以下の点において有益である。[1]
- 競争環境に関するトレンドを意識する。
- 変化しつづける将来に備える。
- 日々の業務に集中せざるをえないような圧力の中で、長期の視点にも十分な注意を払うことを促す。
- 機能別に特化しているが、地理的に分散しているような大規模組織において、目標と行動の一貫性を確保する。
・SWOTとは以下である:
Strengths:企業の強み、Weaknesses:企業の弱み
Opportunities:外部の機会、Threats:脅威
- 外部環境分析
- 機会と脅威の分析をマクロ、ミクロ的*に行う。以下は[2]参照。
- 機会-企業が利益をあげられるような購買者ニーズが存在している分野。魅力度と成功確率のマトリクスが有効。
- 脅威-環境上の脅威など、売上や利益が損なわれる難局のことであり、深刻度や発生確率で示されることが望ましい。
- *下図は[3]を参考に作成。
*マクロ環境要因-デモグラフィックス(経済的、技術的、政治-法的、社会-文化的)、ミクロ環境要因-顧客、競合他社、流通業者、供給業者、の自らの利益をあげる能力に影響を与える主要な要因
- 内部環境分析
- 当該事業が、マーケティイング、財務、製造、組織の各コンピタンスにおける内部的な強みと弱みを評価する。
漸進主義的アプローチ
上記のような合理的主義に対し、「現在のようなビジネス環境の複雑性と変化を完全に理解することはできない」として、自らのもつ知識は不完全であると認識した上で、漸進的主義者は企業戦略を順応させる準備を以下のステップで行う。[4]
- 定められた目標に向けて慎重なステップ(もしくは変化)を踏み出す。
- ステップ(変化)の効果を測定し評価する。
- 目標を(必要に応じて)修正し、次にとるステップ(変化)を決定する。
この行動手順はトライ・アンド・エラー、体験して確かめる、学ぶ、などと言われているものである。
論点
合理的、漸進的、どちらが優れているというわけではない。
不確実性に対応できなければ、企業は存続を危ぶまれるが、かといって(不確実性を考慮に入れず企業戦略に融通が利かない)合理的な分析が否定されるわけではない。
また、不確実性に過剰に反応して、資本を投下することは、投資効率を低下させてしまうが、漸進的なアプローチが否定されるわけではない。
ここで重要なことは、企業は、不確実性に対し、効果的に対処する方法を学習することと、成功したマネジメントは完全に再現できないことを知るべきなのである。([1]pp90-91, マネジメントに対する含意より)
<参考文献>
[1] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント
』, NTT出版,2004, pp88-89.
[2] フィリップ・コトラー, 恩藏直人監修,月谷真紀 訳,『コトラーのマーケティング・マネジメント 基本編
』, ピアソン・エデュケーション,2002, pp58-59.
[3] フィリップ・コトラー, ケビン・レーン ケラー, 恩藏直人監修,月谷真紀 訳,『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版
』, ピアソン・エデュケーション, 2008, p68「機会と脅威のマトリクス」より。
[4] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント
』, NTT出版,2004, pp89-90.
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